一人旅を「寂しい」と思える心を、忘れてはいけないのかもしれない

十代から二十代の前半にかけて、私は無類の一人旅好きを公言していました。
私が旅好きになったきっかけは
- 10代のときに出かけた青春18きっぷの一人旅
です。
1週間の旅行で関西から四国、九州へと横断、ぐるりと鹿児島から博多まで北上して帰路に着くという安旅は予算三万。
リュックサック一つにすべてを詰め込み、電車の時刻表を片手に出かけた勢いだけの一人旅。
私にとって今でも思い出深い旅の一つです。
このとき私が気づいた一人旅のメリットは
- 思い立ったらすぐにどこへでも出かけられる
- 服装や化粧に気を使う必要がない
- 安宿やゲストハウスに泊まることが出来る
- 好きな場所にどこへでも行ける
- 新しい出会いがある
- 時間の使い方が自由(寝坊OK)
というものでした。
それから味を占めた私は、北海道から石垣島。
果てはカンボジアに至るまで合計すれば20は下らないほど一人で旅行に出かけたと思います。
このままでいいのだろうか?
ところが此の頃
一人旅に行く機会が少し減りました。
(といってもここ半年の話になります)
これは私にとって
ちょっとした事件
です。
それまでの私はどこに行くにも躊躇うことなく一人でGO。
一人旅が大好きで仕方ない人間だったからです。
自分の気持ちに訪れた小さな変化。
それは昨年の夏、タイに一人で旅行に訪れたときのことでした。
いつものように飛行機に乗り、窓の外の景色を眺めながら、私はぼんやりと
「このままでいいのかな」
と考えていました。
タイでの旅行は、いつもと違い少し豪華なホテルを予約しました。
広々とした部屋、鏡張りの大きな浴槽、窓から見える夜景。
それらをぼんやりと眺めながら、また私は
「このままでいいのかな」
と考えていました。
一人旅には多くのメリットがあります。
勝手気ままな私はその多くのメリットに魅了されてきました。
けれども、また欠点があるのも事実なのです。
それは
寂しい
という一抹の気持ちです。
具体的にあげると
- 食事をする際に少し寂しい
- テーマパークのような家族連れやカップルが多い場所は少し寂しい
- ツアーの一人参加の写真撮影時も少し寂しい
- 素晴らしい場所や景色に出会ったとき、その感動を分かち合える人がいない
という欠点があります。
小さいころからグループ行動が大の苦手で、単独行動をこよなく愛してきた私は、一人でいるのが好きな人間だと自分のことを認識していました。
それでもこうして旅を重ねるうちに気づかされるのは、やはり人間は群れを形成して、その中で生きていく習性を生まれながらに備えた動物なのだということです。
一人旅は、欲張りなもので、多くの景色を経験を得ることが出来ます。
けれども楽しさを分かち合う人がいるか否かというのは、とても重要なのかもしれません。
複数人旅の魅力は、恋愛の魅力と少し似ている
一人人旅と同じく、複数人の旅にも魅力は沢山あります。
例えば
- レンタカー代を折半できる
- お互いの写真を撮りあえる
- 海外では特に治安の面で安心
- 食事をとるとき、楽しい
- 素晴らしい経験や景色を共有できる
といったものです。
箸が転げ落ちるだけでも楽しい時期というのがあります。
が、大人になってもやはり、気心知れた友人とお酒を飲んだり、談笑したり。
それだけで笑えるのが人間の面白いところでしょう。
そこに旅という要素が加われば、笑顔の数も増えていきます。
しかし一方で
- ハプニングに見舞われた時、喧嘩になりやすい
- 予定を合わせなくてはいけない
- 好きな場所に自由に行けない
- 予算を考慮しなくてはならない
といったデメリットもあります。
複数人旅に、即効性はありません。
自分がコントロールできる部分も限られてきます。
好きな場所にフラフラと行くことなんてできず、必ず相手と相談しなければいけません。
旅が好きで行きたい場所や見たい景色が多くあるのであれば、一人旅の魅力はやはりとても大きいと私には思われます。
そんなことを考えているうちに、私の頭に浮かんだのが
恋愛
というキーワードでした。
旅というのはよく、人の人生に例えられるものです。
人生という名の旅路という具合に。
だからこそ、それを恋愛に例えることもできるように思われます。
一人旅の魅力と複数人旅の魅力。
それは独身の魅力と結婚の魅力、逆にデメリットと等しく同じのようにも思われます。
一人旅の気楽さ
お金と時間を自由に使え、誰にも何も相談する必要はない。
自由にどこにでも行って、なんでもできる、利便性にあります。
時折感じる寂しさに気づきながらも、それに蓋をして旅を楽しく過ごすことも、十分にできるでしょう。
まさに、独身貴族さながらです。
複数人旅の楽しさ
経験を分かち合い、同じ景色を見ながら、互いに感想を語り合う。
ハプニングも協力して乗り越える。
一緒にいることで、予算や行き先について悩んだり、時には喧嘩もする。
お互いを煩わしく感じることもあるけれど、それを上回るメリットを感じることも多くある。
まさに夫婦生活と同じですね。
人間の幸福度と結婚について
さて以前、読んだ興味深い話の中に、結婚における人間の幸福度についての話がありました。
その話によると人間の幸福度は
- 相思相愛の仲が良い円満な夫婦
- 独身
- あまり仲が良いと言えない夫婦
- 夫婦喧嘩、DV、相手の浮気、離婚などのトラブルを抱えた夫婦
という順に決まるというものです。
この記事を読んで衝撃だったのは、独身の位置が意外に高いということでした。
しかしこの結果は、よく考えれば妥当なのかもしれません。
独身であることは最上の幸福を得ることが出来ない。
が、人間関係が引き起こすあまりに悲惨なトラブルや悲しみを回避できます。
その意味では常に安定した幸福度を保つことが出来ます。
同じように一人旅もまた、旅を楽しむためのスタイルとしては安定した喜びや楽しさをもたらしてくれるものだと私は思います。
無暗に「一人旅は寂しい」と考えるのは、あまりに安直です。
複数人で出かける旅だから、必ず楽しいというわけでもありません。
一人ならもっと自由に気ままに過ごせる時間があるのですから。
けれど一方でタイ行きの飛行機に乗りながら私が思った
「このままでいいのかしら」
というぼやきは、決して無視してはならないものだとも同時に思います。
一人旅を「寂しい」と感じられなくなったとき
一人旅を「寂しい」と思う。
それは、とても大事な気持ちなのかもしれません。
もし「寂しい」という気持ちを忘れてしまったら
- そのとき私は、人生における最上の喜びに手を伸ばすことを無意識のうちに諦めてしまっている
ともいえます。
振り回されてしまうものではなく、引き出せば、すぐに手元につかむことが出来る「寂しさ」
それは決して悪いものではなく
- 多くの人と出会いたい、自分の考えや気持ちを共有したいという欲求を高めてくれる大事な引き金
なのかもしれません。
また繰り返し春が来て、今年もベランダから見える景色に、桜が舞うのでしょう。
季節は繰り返しても、私自身は十代の頃とはモノの見方も捉え方も変わっていきます。
今年も多くの場所に出かけたい。
一人旅も多くするでしょう。
でもその旅のどこかに、必ず「寂しい」という気持ちを忘れないようにしたい、そんなことを思います。
一人旅に関する記事はこちら



コメント
コメント一覧 (3件)
初めまして。
あまりこういったブログにコメントは書かないのですが、コンテンツが興味深いものが多く率直な感想を書かせていただきます。
自分もぱじゃねこさんと同じく1人旅が好きで20代の頃は時間を見つけて国内の色々なところに出かけていました。ただ海外の色々なところに1人で行くことはなかなかないため、自分よりも若い女性が色々なところに行かれているぱじゃねこさんの行動力はすごいと感心しました。文章の書き方も上手で、イメージしやすく海外へ行く際の参考になります。
また、特にこの1人旅を寂しいと思うということを忘れてはいけないという考え方は斬新で新しい発見でした。1人の時間は色々な思いを馳せることができるので、考えることも多いですよね。
今後も様々な経験談楽しみにしております。
長文失礼しました。
此方こそ、はじめまして。
コメントくださり、有難うございます。
当ブログを気に入ってくださったのが伝わってくるお言葉ばかりで、とても嬉しいご感想でした。
海外は私自身、はじめて出かける際に不安が大きかったので…少しでも同じような人の手助けになればと考えて書いています。
のびのび気楽な1人旅は大好きなのですが、誰かと一緒にいることでしか得られない喜びもあるのは認めざるを得ません。
ただ「寂しい」と思ってしまう気持ちを肯定して、誰かと会うための引き金のように利用できたら、もっと人生が豊かになるのかな…という思いを込めて書きました。
マイペースな雑記ブログで更新も不定期ですが、またコンテンツを増やしていく予定です。
今後ともお立ち寄りいただければ、幸いです(^^)
それでは此方こそ、失礼いたしました。
とても楽しく読ませていただきました。海外は行ったことはないですが、筆者様のように国内を一人旅をするのが好きです。ただ、それと同時に一人旅をすることに対する虚しさが年々強くなってきていて、、、かといって複数人で行動するとなるとそれはそれで言い合いや揉め事になるのも煩わしく感じる、、、それぞれいい面悪い面があって、どうしたものかなぁお思っていたのですが、「寂しいと感じることは悪いことじゃなく、新たな喜びを手に入れるための引き金になるかも」というお言葉に胸打たれました。